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失敗しないCMS導入の勘所:CMS導入プロセスの定石(2)

2009年6月12日
テクニカルディレクター 棟

第一は「コミュニケーション」活動

  1. コミュニケーション
  2. 計画立案
  3. モデリング(分析・設計)
  4. 構築
  5. 展開

前回の記事で、5つのステップからなるプロセスフレームワーク(ロジャーS.プレスマン著『実践ソフトウェアエンジニアリング』)を紹介しました。 このなかで最も重要なステップは「コミュニケーション」活動です。「上流工程」及び「超上流工程」に該当するステップです。 上流の過ちを下流で正すことには限界があります。何事も始まりが肝心。 今回は、この「コミュニケーション」活動で押さえておきたいポイントをまとめてみたいと思います。

ゴール指向

CMSの導入はあくまで手段です。CMSの導入は、何らかの目的があって行われるものです。しかし残念ながら、手段ありきツールありきのプロジェクトは少なくありません。そして、ゴール(目的)が不明確なプロジェクトは、確実に迷走していきます。

プロジェクトのなるべく早い段階に、関係者間で達成すべきゴール(目的)を明らかにし、共有し、合意しておくこと、が大切です。ゴールは、それを達成するための手段(選択肢)を探したり、選択する際の判断基準でもあります。判断基準を予め定義しておくことで、プロジェクトを早く確実に進めることができると考えています。

達成すべきゴールを見出して、合意することができないケースもあります。そんなときは、ゴールを支える「価値観」から考えていくと、合意点が探しやすくなります。企業行動を支える基本的な価値観が、収益拡大につながるものと、コスト削減につながるものに大別されるように、企業の価値観は多くの組織でほぼ共通しています。コーポレートサイトの構築も同様です。コーポレートサイトへのCMS導入に共通する目的は、Webサイト運営の生産性向上に関する事柄と品質向上に関する事柄に集約されます。ゴール設定が難しいときは、まずは基本的な価値観の共有からはじめると良いかもしれません。

フィット&ギャップ(適合性評価)

ゴールを定めたら、次はツール(手段)の選定です。ツール選定にあたっては、CMSパッケージソフトウェアの機能仕様と、要件とがどの程度適合しているのかを見極める必要があります。いわゆるフィット&ギャップ分析です。分析を行うと、出来あいの機能仕様では実現できないこと(ギャップ)が出てきます。

ギャップへの対処法は、次の3つです。

  1. 他のツールを探索する
  2. パッケージに合わせる
  3. パッケージをカスタマイズ・アドオンする

CMSパッケージソフトウェアは、出来あいの製品です。すべてが完全にフィットするCMSパッケージソフトウェアを探すのは容易ではありません。まずは「パッケージに合わせる」という発想が大切です。それでもなお埋められないギャップについては、カスタマイズ・アドオンを検討しましょう。ただし、カスタマイズ範囲には注意が必要です。カスタマイズ範囲があまりにも大きい場合は、パッケージ利用ではなく、フルスクラッチによる開発を検討すべきです。

また、フィット&ギャップ分析(適合性評価)は、パッケージそのものの専門的な知識や知見が必要となったり、評価する範囲も広範囲に及びます。構築ベンダーなど、専門家の手を借りることも検討してみましょう。

データモデルとテンプレートのマッピング

データモデルとテンプレートのマッピング、詳細設計は「モデリング(分析・設計)」活動で行います。この段階では、そもそもどんな情報(コンテンツ)をWebサイトを通じて配信するのかを押さえておくことが重要です。どんな情報を配信するかが分かれば、CMSで管理すべき情報(データ)が想定できます。

押さえるべきポイントは、二つあります。第一に、掲載したいコンテンツの情報構造(概念的なデータモデル)。サイトに掲載するときに、掲載するであろうコンテンツの属性情報をある程度想定しておきましょう。第二に、コンテンツの発生源(データフロー)。このコンテンツは基幹系のシステムから持ってくるとか、ワードファイルで作成されている報告書を転用するなど、具体的なデータソースとデータフォーマットを押さえておきましょう。

構築後のフローを見据える

「コミュニケーション」活動の時点から、構築後の運営フローを考慮に入れておくことはとても大切です。特にWebサイトの構築の場合は、とかく見栄えなど、目に見えることだけに注力しがちですが、CMS導入してサイトを構築した後のタスクを考慮しておきましょう。忘れがちな点として、次のようなものがあります。

コミュニケーションプラクティス

最後に、ロジャーS.プレスマン著『実践ソフトウェアエンジニアリング』に掲載されている「コミュニケーションプラクティス」の中から、私のお気に入りの原則をいくつかご紹介します。

  • 原則1:聞く.
  • 原則2:コミュニケーションの前に準備する.
  • 原則8:何かが不明確であれば,図を描く.
  • 原則9:(a)何かに合意したら次へ進み,(b)何かに合意できなかったら次へ進み,(c)機能やフィーチャーが不明瞭でその時点で明確にできなければ次へ進む.
  • 原則10:交渉は競い合いやゲームではない.両者が勝ってこそ成功である.

次回の予告

次回は、CMS導入前アセスメントについて、ポイントをご紹介する予定です。