失敗しないCMS導入の勘所:5つのポイント
前回は、CMSパッケージを利用したサイト構築の課題点を挙げてみました。今回からは、これらの課題を克服するためのポイントを考えていきたいと思います。
5つのポイント
当社のCMSを利用したサイト構築経験から、失敗しないための勘所を5つあげてみます。
- 導入プロセスの定石
- CMS導入の評価軸を持つ
- 上流工程は神様
- ベンダと協働する
- 運用・保守こそが最上流
1.導入プロセスの定石
新人の頃、先輩から
「仕事はPDCAを回せ」
「仕事はじゅん(準備)・だん(段取り)・かく(確認)が大切」
など、仕事の定石と言われるものを多く教わりました。CMS導入プロセスにも、こうすれば上手くいくという定石のようなものがあると思っています。定石を知らないのと知っているのとでは、導入の成否も変わってきます。
典型的なプロセスは、5つのフェーズからなります。
- コミュニケーション
- 計画立案
- モデリング
- 構築
- 展開
それぞれのフェーズの重さや粒度は案件ごとに異なりますが、共通するポイントはインクリメンタルに順を追って徐々に進めていくことです。
2.CMS導入の評価軸を持つ
CMS導入前の「じゅん(事前準備)」として、「環境アセスメント」ならぬ「CMS導入アセスメント」が重要です。環境アセスメントとは、開発事業による環境への影響を事前に調査・評価することですが、CMS導入プロジェクトでも、CMS導入による業務や事業への影響を、事前に評価・予測しておくことが導入の成否を決めると考えています。
評価するポイントは、3つあります。
- CMSパッケージそのものの評価
- CMSを導入したソリューションの評価
- CMS導入プロジェクトにおける体制の評価
3.上流工程は神様
トヨタ生産方式で使われる言葉に
「前工程は神様、後工程はお客様」
というのがあるそうです。企画・設計不良を販売の工程で取り返すのは至難の技。前工程の成果物は、後工程にとっては自分ではコントロールできない、まさに神の領域です。前工程では、後工程をお客様とみなして、不良品を流さない工夫が求められます。
CMS導入プロジェクトにおいても、要求定義・要件定義といった上流工程のマネジメントが、プロジェクトの成否を分けます。上流工程で不良品を出さないポイントは、「ゴール指向」と「ソフトウェアエンジニアリングの知見」です。
4.ベンダと協働する
臨済禅師の語録『臨済録』にこんな言葉があります。
「随所に主となれば、立処皆真なり」
解釈は他にもあるようですが「どのような状況にあっても自ら主体的に考え、行動することが大切」といった意味でしょうか。とにかくサイト構築プロジェクトは、「"これ"が欲しい」ではなく「"こんな"モノが欲しい」といった、「こんな」という曖昧な条件が入り込む世界です。「こんな」とはどんなモノなのか、発注側も受注側とともに、自ら主体的に考え、ベンダーと一緒にプロジェクトを推進するという構えが、プロジェクトの成否を決めるポイントです。
5.運用・保守こそが最上流
「プログラム 作るは一代 直すは末代」とは、ITpro主催「SE川柳」の一句です。新しく作ることは、一見華やかなことではありますが、作っている時間よりも使っている時間のほうが長いのが事実です。
CMS導入プロジェクトも、「導入すること」、「構築すること」が目的ではありません。実際に日々の業務でお使いいただくことで初めて価値をもたらすものです。そういった中で、PDCAを回しながら少しずつ改良を重ねていく保守業務も重要です。運用しやすい・保守しやすいサイトを構築するには、構築後のプロセスを見据えた事前の計画が欠かせません。
次回の予告
今回は、CMSベースのサイト構築プロジェクトの勘所を5つあげてみました。次回からは、個々の勘所をより具体的に深堀りしていきたいと思います。