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失敗しないCMS導入の勘所:CMS導入プロセスの定石(1)

2009年5月21日
テクニカルディレクター 棟

前回は、CMSパッケージを利用したサイト構築の勘所を5つあげてみました。今回は、CMSを利用したサイト構築を行う際の「導入プロセス」について考えてみたいと思います。

CMSの3つの特性

実際の導入プロセスを考える前に、CMSアプリケーションの特性を整理してみます。ちなみに、ここでいう「CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)」は、Webサイトを作成・管理する「WebCMS」のことを指します。

  1. 「Webシステム」
  2. 「パッケージソフトウェア」
  3. 「コンテンツ」と「デザイン」の分離

第一に、CMSは、サーバにインストールして利用するWebアプリケーションです。つまり、ネットワーク/ハードウェア/OS/各種ミドルウェアと連携して動作するWebシステムの一種です。そのため、CMSを利用したWebサイト構築では、Webシステム開発が抱える課題と同様の課題が起こり得ます(具体例は「CMSをベースとしたサイト構築の課題」を参照ください)。これらの課題を克服するには、通常のシステム開発と同様にソフトウェアエンジニアリングの知見に基づいた導入プロセスを踏む必要があると考えています。

第二に、CMSは、パッケージベンダーによって開発・製造された「出来あい」の製品です。スーツに例えるなら、フルスクラッチはテーラーによるフル・オーダーメードであるのに対して、CMSは「既製服」あるいは既製服ベースの「パターン・オーダー」です。スーツ作りにおけるパターン・オーダーが既製のパターンの中から自分の体型や好みに近いものを選ぶように、CMSを利用したサイト構築では「予め自らの制約や要望を把握し、把握された制約や要望とCMSの機能仕様との適合度合いを確認する」ステップが必要です。

第三に、CMSは、画像や文字情報などの「コンテンツ(データ)」そのものと、レイアウトなどの見た目に関する要素「デザイン(ユーザインターフェース)」とを分離して管理しています。具体的には、CMSがWebページを生成する場合、「CMSは、ブラウザからのリクエストを受け付けると、RDBMSで管理されたデータソースからデータを取得して、取得したデータをテンプレートで定義されたデザインレイアウトに当てはめ、HTMLをレンダリングしてWebページを出力する」という手順を踏みます。CMSベースのサイト構築では、こうしたデータとユーザインターフェースとを分離してい管理するという基本設計を考慮して、サイト設計・仕様固めを行う必要があります。

プロセスのフレームワーク

CMSを利用したサイト構築は「システム開発プロセス」に倣うことで、失敗しない導入プロセスの手掛かりを得ることができると考えています。ここでは、手掛かりを得るための参考となるプロセスをご紹介します。

1.コミュニケーション
顧客やステークホルダとの重要なコミュニケーションや協業、要求収集などの活動。
2.計画立案
以降のソフトウェアエンジニアリング作業に関する計画の策定(遂行すべき技術的なタスクや発生しそうなリスク、必要な資源、作成すべき成果物や作業スケジュールを記述)
3.モデリング(分析・設計)
ソフトウェア要求を顧客と開発者がよりよく理解できるようなモデルの作成と、要求を実現するための設計。
4.構築
手動あるいは自動でのコード作成と、コードのエラーを発見するためのテスト。
5.展開
完全なエンティティあるいは部分的に完成した区切りとしてソフトウェアは、製品を評価し、評価にもとづいたフィードバックを提供してくれる顧客に納品される。

上記は、ロジャーS.プレスマン『実践ソフトウェアエンジニアリング』で提示されている「プロセスフレームワーク」です。システム開発における開発プロセスというと、ウォーターフォール、スパイラル、プロトタイプモデル、UP、RUP、Scrum、XPなど様々な手法が提唱されていますが、どの手法を採用したとしても必ず踏むべきステップがあると思います。上記は、そうした一般的なプロセスの全体像を把握するのに良いモデルです。ポイントは、5つのステップを段階的に順番に踏むことです。

次により具体的なプロセスとしては、「情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会~情報システム・モデル取引・契約書~受託開発(一部企画を含む)、保守運用」の「パッケージ活用型におけるプロセス」が参考になります。このプロセスは、ERPなどの業務アプリケーションパッケージの導入で、比較的大規模なプロジェクトを想定したモデルとなっていますが、CMSを利用したサイト構築のプロセスにも、大いに示唆を与えてくれると思っています。詳しくは、報告書を参照していただければと思いますが、ポイントは「ゴール指向」と「フィット&ギャップ」です。

次回の予告

次回は、ご紹介したプロセスを踏まえて、CMS導入プロセスにおける具体的な留意点について詳しく説明したいと思います。

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